静音     作 瞳

 

女の家

歌を歌っている女

 

女 ちょうちょ〜ちょうちょ〜な〜の〜は〜に〜...

 

現れる男1。女の家の玄関チャイムを鳴らす。

 

女 !...はい..

 

玄関のドアを開ける女

 

男 こんばんは。

女 ...こんばんは。

男 また歌ってた?

女 ....

男 歌ってたよね!?

女 ...はい。

男 今何時?

女 すみません。

男 すみませんじゃなくてさ、今何時かって言ってんの

女 ...1時..半...

男 だよね?深夜に出す声じゃないよね?もっとボリューム上げてくれる?

女 すみません。

男 だからすみませんじゃなくて、上げてね?

女 ..はい。

男 はあ〜〜

 

去っていく男

 

女 はあ...

 

再び歌う女

 

女 ちょうちょ〜ちょうちょ〜な〜の〜は〜に〜...

 

現れる男2。女の家の玄関チャイムを鳴らす。

 

女...はあ。はい..

 

玄関のドアを開ける女

 

男2 あ...こんばんは。

女   ...こんばんは。

男2 あの..また窓が..

女   ....まど..

男2 閉まって..ます。

女  あ..

男2 昨日も言いましたよね?

女  あ...はい、す..すみません。すぐに、開けます。

男2...はい。お願いしますね。

女  すみません..

 

ドアを閉める女

 

男2 ・女 はあ..。

 

再びやってくる男1

窓を開ける女

 

男1 あれ?こんばんは。

男2 あ、こんばんは。

男1 あ、もしかして..お宅も..

男2 あ、はい...。

 

大きく聞こえる歌声

 

男1 はあ。わざとやってんのか?もっと上げろよ。懲りないな〜

男2 ほんとに..

男1  ったくこんな時間に静かにされちゃあさ。

男2  困りますよね。うちだって必死に子供と..

男1  お子さんがいるんですか。

男2 あ、はい。もうすぐ一歳になる子が。

男1  ああ、そりゃ大変なときですね。

男2 はい。妻だって毎日必死な思いで。

 

女の声が若干小さくなる

 

男2 どれだけ寝不足でも夜な夜な窓開けてドア開けて..!

 

女の声がまた小さくなる

 

男2 子供と一緒に..っ!はち切れんばかりの声で‼︎僕だって一緒に泣いているのに!!!

 

男2の声で歌を止める女。ドアに近づき二人の声を聞く

 

男2 あ、すみませんつい..。不満を言いたいわけじゃないんですけど。

男1 いえいえ!わかりますよ、誰だって自分の生活があります。私だってそうです!どれだけ大声で羊を数えているか..!そういう苦労を、若者はわかっちゃいない。がんばってますよ、あなたは。

男2 ありがとうございます。あなたこそ、ご立派です。見習わないと。

男1 ははっ!いえいえ普通のことです。わたしは独り身ですから、自由自在!ここはがつんとわたしが..ん?そう言えば声が..

男2 またか..

男1 何回言えば気がすむんだ..

 

男1がチャイムを鳴らそうとすると大声が聞こえる

 

女 ちょうちょ〜!ちょうちょ〜!なーのーはーにーとーまーれー!

 

男1...

男2...

 

ドア越しに話す女

 

女 ご、ご迷惑おかけして..すみませんっ!あの、、ぇ...と..その!わっわたし!ひっ一人の空間じゃないと...声が、、声を、上手く出せないんです。

 

だんだんと小さい声になる女

 

女 でも..歌だったら..歌だったら、、自然と...こ、声が出るんです。

男1...

男2...

女 .........でも..まだボリュームが....

 

しばしの沈黙

男1がため息をつく

男2がため息をつく

 

女...っだから!あの..!..っもうすこし!もう少しっ時間をください!もうすこし..で、かならず..かならず大きくしますから!大きな声で歌えるようになりますから!話せるようになりますから!

 

ドアをノックする男1

 

女 !

 

ドアをノックする男2

 

女!

 

ドアを開ける女

 

女こんばんは!!!

 

男1・男2 うるさいよ

 

女 え?

 

C.O